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16.9.15

ワインが生み出す空間*札幌

札幌の秋の風物詩となりつつある、『さっぽろオータムフェスト』。
中心部の大通公園で半月に渡って開催される、北海道の味覚が一堂に集結するイベントだ。
 
 
なかでも私が気になっていたのは、北海道が生むワイン。
北海道では温暖化の影響を受けて、年々ワイン用ブドウの栽培がしやすくなってきているそうだ。
品種としては白はドイツのケルナー、赤はオーストリアのツヴァイゲルトなどが主流のよう。
 
 
他の国産ワインよろしく、やはりヨーロッパでのワイン祭りと比べてしまうとなかなかいいお値段なのだけれど、
これだけの期間に、これだけの種類を楽しめる立ち飲みバーが設置されるというのはすごいことではないだろうか、と思う。
 

 

 ヨーロッパで出会った、「ワインが身近にある空間」は私にとっては衝撃的で、
日本で持ち続けていた、ヨーロッパの手の届かない高級感が良い意味で崩れた瞬間でもあった。

日本でもワインは徐々に広まって、最近ではバル(なんでスペイン語なのだろうといつも思う…)も増えて気軽には飲めるようになってきてるとは言っても、
日本酒やビールと比べるとまだまだ高級品でおしゃれなイメージが強く、ある種のステータスにもなっているように思う。

価格が変動しない以上、なかなか価値観を変えることは難しいのだろうけれど、
ワインには他のお酒にはない、空気を滑らかにする特別な魅力があると私は思っている。

優雅、特別、上品、お洒落。
決して悪い言葉ではないのだけど、もっと身近な優しい言葉が似合う魅力が。
大げさだけど、日本人に足りない何かがそこから生まれるのじゃないかなんておもってしまったり。

余市・ツヴァイゲルトレーベ&道産素材を使ったペスカトーレ

ドイツ・リースリング&道産チーズ

十勝・清見、山幸&ミュンヘナーヴルスト、ザワークラウト
 
ワインの歴史はまだまだ浅く、質も量も磨かれていくのはこれからなのだと思う。
 
でも、ワインを取り巻く環境が特に北海道には豊富にそろっている。
多くの食材と、何よりも物理的に大地を感じる広大な空間。

このお祭りにはそんな魅力的な空間のカケラがあるように思う。
それがなんだか今の私はすごく嬉しかった。



6.3.15

美食の街*リヨン


フランス第二の都市、リヨン。かつては絹で栄えた商業都市。
街はセーヌ川とローヌ川の二つの川に分断された3つの地区からなる。

美しいのはやっぱり川沿いの手工業の街並み。
どこかの絵でこんな風景を見た気がする。
パリのベースの色が白ならば、リヨンの街は淡彩色だと思う。

 


この街、名物のクッスンをいただきながらエスプレッソを飲んだ。
日本の和菓子を食べながら抹茶を飲んでいる感覚になるから不思議だ。

同じヨーロッパでも隣り合うドイツとはちょっと違う。
ドイツならば大きいケーキに伸ばしたコーヒーが合う。
どちらかが良いわけではなくて、おしゃれなわけではなくて、
そこの空気ではそれぞれが居心地よくさせる気がする。



美食って何だろう。

同じ価格帯なら、美しさというものなら日本のほうがきっと素敵な料理とサービスが出てくるに違いないと私は思う。

でも、美しい時間というのならどうだろう。
地元の大地を感じる時間をこんなに楽しむことが出来るだろうか。
気取らないけれどかけがえのない時間を楽しむことが出来るだろうか。

食でも、人でも、美しさは本当に奥が深い。
でも、全てが明確ではない部分の味わい。隠れた部分があるからでこその味わい。
それが本当の美しさなのかな、と思う。

14.10.14

実りのブドウ畑の記憶*リューデスハイム

 
 
2013年10月初旬。ドイツはライン川のほとりのリューデスハイム。
ワイン好きの人であれば知っているであろう、ここはドイツワインの一大産地だ。
とくにここで有名な品種は収量の最も多いリースリング。
フルーティーな香りと酸味が特徴の白ブドウである。


リューデスハイム周辺のラインガウ地方は、南向きの急斜面の丘が広がることで、
美味しいワインを作るためのブドウを生産するのに十分な日射量を受けることができる。
また、ライン川からの太陽光の反射も加わることで、「太陽の2度当たる場所」
とも呼ばれてきたように、古くからワインの好生産地となってきた。

そんなワイン産地が一段と活気づきはじめるのがこの9月下旬から10月にかけての季節。
丘一面のブドウ畑ではブドウの実が輝き始め、葉は少しずつ色づき始める。


街では昨年収穫されたブドウによる発酵途中のワインの新酒、
フェダーヴァイザー(独語:Feder Weisser=白い羽)が振る舞われ、
今年のブドウの収穫への期待も高まってくる。

Feder WeisserとZwiebel kuchen(玉ねぎのキッシュ)のセット
飲めるのは例年9月下旬から10月半ばころまで

ドイツといえばビールのイメージが強いが、この地方ではむしろワインのほうが好まれていて、
カフェでももっぱら昼間からワインを飲んでいる人の姿のほうが目につく。

ワインの地産池消の街。
日本の高いワインのイメージからするとなんともすごく贅沢な気がするが、
日本のように質の良い水を豊富に得ることができなかった古きヨーロッパでは、
ワインは保存できる水代わりに飲まれていたという話も聞く。

もちろん今ではそんなことはないのだが、
それでも日常に欠かせない飲み物であることには変わりがない。
ワインの格付けにはテーブルワインという位置づけもあるくらいだ。


ブドウの収穫作業には様々な地域・国からの労働者が携わることも多い

ところ変わればではあるけれど、もしかしたらこのリューデスハイムのブドウ畑の広がる風景は、
日本人にとっての茶畑のようなドイツ人にとっての心の原風景なのかもしれない、
とマルクト広場のワインスタンドでグラスに注がれた輝く黄金色のワインを片手に、
和やかな時間を過ごすドイツ人の旅行者たちを見ながら思った。