7.2.15

氷の街*釧路

日本の東北の果て最大の街、釧路。
かつては炭鉱と漁業の街として栄えたそうだが、今はどちらかというと道東の観光拠点というイメージが強い。


北海道の中でも特に冷涼で、夏でも25度を超える日は珍しく、避暑地としてにぎわう。
一方で冬場は他の場所と比べるとそれほど冷え込まないのだが、冬は寒いだけという印象が強いらしく、観光客はぐんと減る(これは北海道の他の場所にも言えることだが)。

 
街を見るのなら、私は冬の釧路のほうが好きだ。
その理由は街の中に溶け込んでいる釧路の建築物にある。
毛綱毅曠(もづなきこう)設計のフィッシャーマンズワーフ、市立博物館、市内のいくつかの校舎はじめ、幣舞橋上の四季の象などがそれだ。

これらから受けるのは、城や銀行、商館などといった経済や権力の盛衰の流れを強く考えさせられる過去の繁栄の遺産とは違う、どちらかと言えばバルセロナのガウディの作品群に近い、時代を超えて大地に作品を根付かせようとする作家の表現力を追求する強い姿勢だ。

雪や氷に他のものが覆われることで、それらはより強い主張を訴えかけるように感じるのだ。
それは、人のそばにあるのに、今の人の生活とは一線を画した特別な空間を創りだしているように感じる。

 

3年間過ごしたこの街には、例えば同じ道東にある、知床のような現生の自然を感じさせる圧倒的な景色はない。
むしろ、人の生活風景がそれを凌ぐ、道東の生活圏の中心となる大きな都市である。


けれど、氷に閉ざされどんよりと曇る冬空のもと、自然と人の手によって創られた創作物との絶妙な組み合わせが、ふとまるでここではないどこか別の世界に誘ってくれるような雰囲気を孕む、日本最北の芸術の街だとも思ってる。

夜の釧路川の闇と蓮氷の淡く光に照らされるオレンジに、吸い込まれ酔わされる。