18.6.14

鳥たちの集う場所*スピッツベルゲン島

「スピッツベルゲン島では一年を通して鳥を見ることができる。」
パッとこの言葉を聞いても、日本に住んでいたころだったらふーん、という感じで終わっていたと思う。それどころかここにきてからもこの意味にピーンとくるまでには時間がかかった。

日本をはじめ、世界中の多くの場所は、大陸であり、暖かい季節があり、動物たちが住みやすい環境がそれなりにあるものだ。
ここが、決してそうではない、とは言い切れないが、白夜と極夜が大部分を占める日照時間、寒冷な気候(夏の最高でも5度前後)、大陸から離れた島、ツンドラ植生(木が一本も生えていない)などと、動物にとっては生死を左右する厳しい環境が広がっていることは確かだ。
古い歴史を振り返っても、アラスカには住んでいた人間ですら、この島には居つくことはなかったという。

Plectrophenax nivalis(ユキホオジロ)

それでも、翼を持った鳥たちのなかには、世界中に他にももっとたくさん行く場所はあるだろうに、こんなきびしい環境の島にやってくるものがたくさんあるのだ。

Sterna paradisaea(キョクアジサシ)


ロングイェールビンで観察される鳥の種類は年間で約40種類ほど。そのうち留鳥は1種類のみ。他はすべて渡り鳥だという。極夜の11~3月ごろには5種程度しか観察されない鳥たちだが、6月には最多で40種類ほどが見られるようになる(Bird Life in Longyearbyen and surrounding area/Georg Bangjord著/Longyearbyen feltbiologiske forening(LoFF)発行/2009より)。

Somateria mollissima(ホンケワタガモ)

種類で言うよりも数。実際に見てみると、その鳥の種類と数の日ごとの変化を肌で感じられる。
音のほとんどない場所。波のほとんどないロングイェールビンの入江。

 


そんな場所で、耳に届く鳴き交わす鳥たちや、波間駆ける鳥たちの存在は、静から動へ、そして再びその逆へ、と移り変わる季節の象徴にも思える。

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