26.6.14

『島の花』スバールバルポピー*スピッツベルゲン島

花壇や畑のないこの島では、家の外に広がるツンドラ草原がそのまま島全体にとっての庭である。
雪解け間もないころはコケが水を吸ってスポンジのような状態だけれど、夏に差し掛かるとその水も花が徐徐に姿を見せるようになる。その花の種類については前にも少し書いた。

けれど、島の花が咲く期間は短く、その多くは高緯度に位置するために、高地性で丈は低く、小さな花をつけるものが多く、近寄らないと気づかないものが多い。

しかし、そんな花の中にも大きくてひときわ目立つ花が一種だけある。
その名もスバールバルという名の付いた、このあたりの固有種スバールバルポピーだ。

Popaver dahlianum ssp. polare

それほど植物に詳しくない人でも、ポピーを見たことのある人なら一目でその仲間であるとわかるであろう、独特の長く柔らかい、たくさんの短い毛が生えた茎と、大きな花弁が特徴の花で、高さは5~30cmほど。

Longyearflora-A basic field guide (Longyearbyen feltbiologiske forening 2012 発行)によれば、砂利場や崖錐物(急傾斜地から剥がれ落ちた岩屑が下の斜面に堆積して出来た地形)に多く見られるそうで、私は住宅近くの道路わきの砂利斜面で多く見かけた。


ちなみにこの花、黄色の個体もある。



住宅のそばでさりげなく、でもすっくと立って凛と咲く姿は、まさにこの島の花にふさわしい夏のスバールバル諸島を代表する花である。

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