22.6.14

トナカイが暮らす場所*スピッツベルゲン島

トナカイの名前を知らない人はいないだろうが、もちろん日本には野生のトナカイはいない。
日本にいる二ホンシカは同じシカ科ではあるがシカ亜科というグループに入る(カモシカはシカと名がつくけどウシ科)。
トナカイはシカ科オジロジカ亜科というグループだ。

スバールバルトナカイ(Rangifer tarandus platyrhynchus

ヨーロッパのトナカイの生息地は少なく、スカンジナビア半島の一部、ロシアと北極圏周辺に限られる。
この島にいるトナカイはスバールバルトナカイと呼ばれるトナカイのグループの7種類のうちの一種(Rangifer tarandus platyrhynchus)。

トナカイの仲間は分布する地域によって、外見上でもわかるそれぞれの特徴を持っている。
一般的なトナカイをイメージしてから写真を見るとわかるかもしれないが、このスバールバルトナカイの特徴は、脚が短い、小型、顔が円っぽい。…なんだか文字で羅列すると小さい女の子の特徴を書いているよう。


基本的に、私は特に大きな動物には怖くて近づけないのだが、似たようなシカの仲間ではエゾシカしか見慣れていなかったので、骨格はしっかりしているのに、思ったより小さい身体で、でも大きな足を持ち、牛のように体を揺らす歩き方、というなんともアンバランスなこの生き物に大きな興味と親しみを感じた。

シカ科シカ亜科エゾシカ(27.02.2013)

以前、エゾシカの近くで暮らしていた場所では、エゾシカは様々な要因で増える傾向にあって、解決のために試行錯誤の取り組みをしていたが、ここではどうやらそれほど厄介な生き物ではないようだ。
この島には、エゾシカでいうならヒグマや過去にはオオカミのような天敵はいない。それでも彼らが爆発的に増えないのは、成熟した雌の妊娠率の年ごとの大きな変動(10~90%)と、北極圏という場所特有の、冬の気候の厳しさに左右される死亡率の年ごとの大きな変動、があるからのようだ。
(Norwegian Polar Institute:http://www.npolar.no/en/species/svalbard-reindeer.htmlより)

エゾシカの歴史と同じように、ここに生きるトナカイたちも、かつては狩猟によって劇的にその数を減らした。そして、現在は狩猟の解放は限定的になり、その数は400~1200の間で推移しているという。これから変わっていく地球規模での環境の変化は、今後彼らたちの生き方にどんな影響を与えるのだろうか。

 住宅街のすぐ近くに姿を見せるトナカイ

かつて人間たちは住むことのなかった頃から、この島でホッキョクグマ、ホッキョクギツネとともに生き続ける私たちと同じ哺乳類のうち、一番人間の目に触れる機会が多く、唯一の草食動物であるトナカイたち。
一見、闘争心のない穏やかそうな生き物に見えるけれど、その大きな足からはしっかりとこの島の地面に寄り添う逞しい生命力を感じられる気がする。

0 件のコメント:

コメントを投稿