6.8.14

野生動物が纏う空気*スピッツベルゲン島


 
野生動物と人とのかかわり。
道端でごみを漁るキタキツネ(北海道・羅臼町)
 
ここにキツネがいると聞いて、日本と同じように人の住んでいる場所の近くだから
すぐにみられるだろうと高をくくっていたのだけれど、待てど暮らせど見かける機会がなかった。
日本に住んでいた時は、登山者のバックパックを引き裂いて食べ物を盗んだり、
民家の近くでごみを漁っていたりする様子がよく見られたので、ここでもそんな感じに見られるのかな、と思っていた。
むしろ、それよりもっと食欲旺盛と聞くホッキョクギツネはそれよりもすごいのだろうか、なんて思っていたり。
 
ここでようやくその姿を見かけることができたのは、ここにくらすようになって3か月ほどたつ、
夜の21時ころだった。曇りで少し薄暗い頃だった。
 
窓を開けて空気の入れ替えをしようとしたときに、
窓の外の動く塊を見つけて慌ててカメラを持って外に出た。
 
 
地面を掘ってネズミか何かを探しているようだった。
ふと、私と目の合った彼の赤い瞳。
言葉ではうまくは言い表せないけれど、日本で見たキツネとは違う、完全に人間とは別の世界に住む生き物の空気を感じた。
そして、あっという間に丘を駆け上がり消えていった。
 
この島では昔からキツネは狩猟対象の動物の一つだ。
それが彼らのヒトへの警戒感を高めているのかもしれない。
 
 
人間は野生動物を支配できる立場にあって、
愛でることもできれば、殺すこともできるのは紛れもない事実だ。
 
野生動物だって学ぶことはできる。愛されればもっと近づいていく。
生き易い方向に流されていく。
でも、その生き方は彼らがその種として生きることの破滅へ向かうことを意味している。
 
 
動物と人との距離。
 
野生動物は別の世界で生きている生き物。
支配できる力を持っているヒトだからこそ、その距離がどんなに大事なものなのかを知っていなくてはならないのではないかなと思う。
 
私は野生動物の纏うこの警戒感が好きで、本当に美しくて愛すべき姿だと思う。


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